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からん ころん

高円寺で、知人とお酒を飲んでいたら「会わせたい人がいるので、呼びます」と言われた。数分後にやってきたのは、妖怪のような男だった。歩くたびに、からんころんと音をたてる下駄。お腹のところに小さめのギターと巾着袋のようなものがきゅっとくくられている。そのギターの弦に指を這わせながら喋る。「気持ちの悪い男で、すみませんねえ」「妖怪みたいですね」彼は笑いながらまだ咲ききっていない桜に向かってうたう。「変な人でしょう、面白いでしょう」「初めてみる生き物です」知人は笑いながら小さく謝る。歌がやんだかと思えば、彼は細い目でじいっとこっちを見ながら「声が、いいですねえ」と言い、私の声の歌をうたう。「やめてください」ととめるけれど、本当はそんなこと思っていない。桜の季節になると、彼を思い出す。にかあっと笑う彼の顔が、ぼんやりと脳裏に浮かぶ。

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